ビハーラノートより


<広く社会の中でいのちを見つめるビハーラ>


  1. ビハーラ活動は、仏陀の教えによって自身の「いのち」の意味と方向を知らされた仏教徒が、生・老・病・死といった困難な状況にある人々(患者とその家族)を支えるために、医療従事者などと協力しながら行っていく活動をいう。
    互いに生まれ・老い・病み・死なねばならない人間としての痛みを共感しつつ、「大悲(心)を学べ」とさとされた仏陀の教えを実践するために、苦難の中にある人びとと心を開いて語りあい、暖かい信頼関係をつくって支援し、その「いのち」を支え、力づけ、苦難の現実に光あらしめようとする活動である。

  2. ビハーラ活動は、特に病める人と、その家族を対象として行っていく全人的な支えの活動であるから、その活動の場所は、主として病院や福祉施設であり、また在宅患者の場合は、その家庭である。





<いつでもだれにでも実践できるビハーラ>


  1. ビハーラ活動は、人びとに身心の平安をもたらすために、さまざまな啓発・学習・実践を行う。我々の周辺には、老・病・死の困難に直面している人たちが多く、またその状況もさまざまである。それゆえビハーラ活動は、特別な資格がなくても、基本的にはそれぞれの関わりで、自由に、いつでも、だれにでも実践できる性格のものである。

  2. ビハーラは、周りから多くのことを聞きとり、学んでいくことになる。そして実践活動を通して、さらに深められていく性格のものである。そのような実践活動にあたって相手のニーズに応じようとすれば、相手はもちろん、そこに関わるさまざまな人びとに理解を示し、援助していくための学びが必要となってくる。

  3. すなわち、ビハーラ活動の現場が具体的であればあるほど、活動者の能力の開発や技能の修得は欠かせない。
     例えば、その活動現場が病院であれば、患者はもちろん、病院側の理解、さらには家族の問題といった多方面にわたる学習が要請されることだろう。





<相手の望みに応えるビハーラ>


  1. ビハーラ活動は「いのち」の尊さを確認しつつ、「いのち」の連帯の場をつくりあげていく活動である。すなわち、人と人との間に深い信頼関係を成立させ、互いに困難や苦悩を聞き取り、相手の願いに応えていく活動を展開することである。

  2. 相手の望みに応えようとするビハーラ活動は、対人援助の分野に属するが、その最初はコミュニケーションである。それによって相互の関係が深まり、円滑になってくる。さらに心身相関の存在である人間にとって、相互の人格的関与が強くなり、ひいては精神的援助を容易にしていく。すなわち、介助によって信頼関係が、より緊密な形で構築されることになるのである。

  3. 人間は、身体の強弱や障害の有無に関わらず尊厳性を有する。私たちは、相手を自らの尺度で判断することなく、互いの尊厳性を認め合いつつ受容することによって共に成長していかねばならない。
     ことに近年、高齢化、家庭機能の弱体化等に起因するニーズは多様化している。こうした状況の中でビハーラ活動は、精神的援助をすすめていこうとしているのである。





<医療・福祉と共にあるビハーラ>


  1. 生・老・病・死の現場は、近代社会となって多くの施設を必要としてきており、また各種専門職の導入がはかられてきている。このような医療・福祉における進歩や複雑化は、全面的にチーム形態を取りつつある。
     ビハーラ活動は、人権や医療・福祉における各分野の専門性を尊重し、かつ十分な配慮をしながら、学際的分野の充実と発展をはかろうとするものである。

  2. 今後は、在宅ケアも増加の一途をたどり、それにともなう家族関係の問題も多発することであろう。また人間の快適志向が強まる反面、苦悩が深刻化するという問題も生じよう。それらの動向をふまえたビハーラのあり方も課題となる。さらに今後は脳死・臓器移植・病名告知・人工的生殖が要請されると同時に、社会的に発言して参加していく必要がある。

 (文責)ビハーラ福井:水戸守 志津子

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